ピスタチオ詳細

ピスタチオの木:

ピスタチオはウルシ科に属します。冬は非常に寒く、夏は暑く長い場所に生育します。ピスタチオは最低マイナス25℃、最高45℃までの気温に耐えることができます。また、干ばつに対して非常に強く、ナツメヤシの木に次いで2番目に長期間水無しで生き延びることができます。根は地中で水を見つけるため深く伸びます。ピスタチオの木を植えてから実を付けるまで、実に7年から10年かかります。寿命は80年から100年です。

 

ピスタチオの歴史と起源

ピスタチオは中東で何千年もの間栽培されており、この地域の人々から愛され続けています。ピスタチオは旧約聖書に登場します(創世記43:11)。

聖ペルシア(現在のイラン)では、ピスタチオ貿易に携わることと、ピスタチオ農園を所有することは富と高い地位を意味しました。伝説によると、ピスタチオはシバの女王のお気に入りだったそうです。アレクサンドロス大王(在位紀元前334-323)がペルシアを征服したことにより、ピスタチオはギリシャに伝わりました。その後、ローマ皇帝ティベリウスの支配下でピスタチオはイタリアとスペインに渡りました。

 

アルプスを越えたピスタチオ:

アルプス山脈の北側では、ピスタチオの存在は長い間知られていませんでした。イタリアからアルプス山脈を越えて中央ヨーロッパに持ち込まれたため、当初は「ラテンペニーナッツ」と呼ばれていました。ピスタチオはイタリア国内では様々な方法で調理されていましたが、中央ヨーロッパでは主にベーカリー用の高価な食材として使用されていました。 第二次世界大戦後、ポピュラーなスナックとして認識されるようになりました。

 

アメリカ産ピスタチオの起源

1880年代、アメリカに輸入されたピスタチオは主にイラン人移民の間で人気がありました。次第にピスタチオは駅、バー、レストランなどに設置された自動販売機で売られるようになり、広く一般に知られるようになりました。近年、アメリカの栽培者は生産量を大幅に増やしていますが、依然としてイランのピスタチオはその独特な味と魅力的な色と形により、消費者の間でより人気があります。

 

ピスタチオの栄養価:

私たちが健康な体を保つためには、年齢に応じた健康問題のリスク要因を減らすことが重要です。健全な心臓と血管を維持することは、私たちができる最も重要なことの一つです。いくつかの研究は、バランスの取れた食事の一環としてピスタチオを取り入れると、健康なコレステロール値を維持するのに役立つことを示しています。近年、健康的な体重維持に関心を持つ人々が増えています。栄養士によると、体重維持のために1日を通して少量のスナックを食べることが重要だそうです。スナックはバランスの取れた食生活の重要な役割を担っています。ピスタチオは1食分(約49粒)あたり3グラムの繊維、6グラムのタンパク質、11グラムの良質な脂質を含んでいます。健康な人が正常な血糖値を維持するには、ピスタチオを適量食べることが有効という研究結果があります。

 

アスリートの健康とピスタチオ: 

スポーツ選手にとって栄養素は非常に重要です。健康的な食事は最高のパフォーマンスのため、そして怪我からの早い回復のために役立ちます。日頃から炭水化物、たんぱく質、脂肪のバランスの良い食事とスナックを食べ、適度な水分を取ることが大切です。これにはピスタチオが役立ちます。ピスタチオは小さく軽いので、どこにでも持ち歩くことができ、運動前後のエネルギー補給に最適です。アスリートにとって、筋肉を維持するためにタンパク質は特に重要です。事実、運動前にタンパク質を摂取することが、運動後の体の痛みを軽減するのに役立つという研究結果があります。ピスタチオは1食分(約49粒)あたり6グラムのタンパク質を含んでいます。

栽培:

ピスタチオの木は、バダミ種の実から育ちます。実を1日から2日間水に浸け、コットンバッグに入れて湿度が高く、暖かい場所(2030度)に保管します。約1週間後に発芽したものを畑に移します。春が近づき気温が上昇してくるにつれて芽が成長し、2月頃に地上に出てきます。この時期の灌水は非常に重要であり、610日毎に行う必要があります。

 

 

芽を植えてから2年後に、バダミ種から別の品種に変える為、交配作業の作業を行います。まず冬の間に育った木の上部、枝を切り落とします。春になると新しい枝が育ち、そこに別の品種の枝を接木します。この作業は非常に繊細な仕事で、将来のピスタチオの種類と品質が左右されるものです。私たちの地域では昔からFandoghi(ファンドギ)が最も一般的ですが、近年は育てやすく収穫量が多いKaleghuchi(カレグチ)とAkbari(アクバリ)に移行する栽培者が増えています。交配作業から2年経つとピスタチオの実がなりますが、まだ品質が十分ではなく、商業価値はありません。通常、ピスタチオの木が成熟し、十分な収穫量が得られるまでには10から12年必要です。但しこれは土壌、水、気候の条件によって変わります。

発芽した実を植えてから10年後、ピスタチオは成熟し年々収穫が増え、15年後に最大収穫量に達します。ピスタチオは収穫量が多い年と少ない年を交互に繰り返します(隔年結果性)。

 

冬は地元の家畜経営者から購入する自然な肥料を撒きます。羊の肥料が伝統的ですが、最近は牛や鶏由来の肥料も使用しています。肥料の種類によりピスタチオの味が左右されるため、私たちは天然肥料を選んでいます。アメリカでは主に科学肥料を使用しています。イラン産ピスタチオとアメリカ産ピスタチオの味が違う理由の一つは、肥料の違いだと考えます。

灌水:

水は砂漠で最も重要な資産です。ピスタチオは暑くて乾燥した天候に強い木ですが、それでも適切な潅水が不可欠です。イランは水工学において長い歴史を持っています。世界で最も古くから使われている取水方法の一つは、ペルシャ人によって発明されたカナートです。現在でもイランの多くの農地でカナートで運ばれた水が使われています。イランには長さ約90kmのカナートが存在します。

 

ピスタチオ農園の灌水には、このカナートを使用するか、電気ポンプを使って深い井戸から取水するか、2つの方法があります。私たちの農園には、約70km離れた井戸からパイプで水を運んでいます。

 

 

灌水の時期については、いくつかの点に注意しなければなりません。過去数世紀に渡る経験に基づき、栽培者たちは、各季節毎に必要な水の量を熟知しており、また適切な水量がピスタチオの質と収穫量に大きく影響することも知っています。それにより、冬は45日毎、春と夏は24日毎に灌水しています。収穫直前のピスタチオは、害虫やアフラトキシンの影響を受けやすい状態です。水分量の増加と共に害虫とアフラトキシンの発生率も増えるため、収穫の2週間前以降は灌水しません。

害虫対策:

私たちの農園の土壌と気候には、害虫が発生しにくい特性があります。その上で適切な害虫対策を行うことにより、被害を最小限に抑えています。害虫が発生する主な理由の一つは、農園とその周辺の土壌の汚染です。秋の収穫後に残った枝や葉などは冬の間に処分し、農園を清掃します。また、春と夏に木を水で洗浄し清潔に保ち、害虫発生を抑制します。それでも万一害虫が発生した場合、農業専門家と相談の上、適切な農薬を使用します。但し、いかなる状況においても、収穫の45日前以降の農薬の使用は一切禁じられています。

収穫:

収穫期が農家にとって最も重要な時期であり、同時に最も神経を使う時期であると言えます。通常、収穫は9月中旬から始まります。収穫時期を見誤ると、ピスタチオの質と量の両方に大きな損害を与えかねません。収穫が遅ければその分アフラトキシン発生の確立が増えるので、遅いよりは早く収穫する方が良いとされています。

  

収穫のタイミングは気候や土壌の状態により変動するため、収穫前は毎日農園を訪れます。長年の経験で培った感覚と、ピスタチオの実の状態によって収穫のタイミングを見極めます。ピスタチオの実は栽培過程において、その色を緑から赤に変化させます。また、成熟するにつれて外皮が柔らかくなるので、それも判断基準となります。下の写真で実の色の変化をご覧いただけます。

私たちの農園では手作業で収穫しています。収穫が長引くと徐々に品質が悪くなる可能性があるため、迅速に収穫しなければなりません。摘み取った実は加工の為トラックで工場に運びます。

私たちの工場は農園から約30kmの距離にあります。工場に運び込まれたピスタチオは、まず外殻を取り除く機械に移されます。その機械で95%以上の殻が除去され、残りは別の機械で分離されます。私たちの工場には最新の機械を導入しています。古い機械と比べてピスタチオの実を傷つけることがなく、綺麗に加工することができます。また、加工ラインが2つあり、スピーディーに作業することができます。ピスタチオの実は外殻に長時間留まると、アフラトキシンの発生確率が高まるので、加工スピードは非常に重要です。

 

外殻を取り除いたら機械で2回洗浄し、水分レベルを約25%に下げるため乾燥機に入れます。その後ピスタチオを選別機に移し、まだ外殻が残っているもの、口が閉じているもの、形が悪いものを分離します。次の図で加工の工程をご確認いただけます。

工場で加工した後、ピスタチオを24時間から48時間、コンクリートの地面に並べ天日干しにします。途中、34時間ごとにピスタチオを動かし、万遍なく日光に当たるようにします。この作業中に形、色の悪いピスタチオが見つかれば取り除きます。この作業が終われば商品として完成ですので、ポリバックに入れて倉庫に保管します。

出荷前は、手作業で2回、形と色をチェックします。その後、アフラトキシン検査のため、EU基準を満たした研究所にサンプルを送ります。私たちは栽培から加工までの全工程を直接管理しているため、アフラトキシンのレベルをゼロに抑えることができていますが、この検査は非常に重要です。検査の結果、アフラトキシンが含まれていないことを確認した後、別の研究所で残留農薬検査を受けます。この検査にも問題がないことを確認してから、通関作業を開始します。幸いシルジャンに税関がありますので、短時間で通関作業を行うことが可能です。最後にイランの税関による品質テストに通過してから商品をトラックに積み込み、シルジャンから350kmの港、バンダレ・アッバースに運びます。輸送は、品質維持のため冷蔵コンテナを使います。

 

イラン市場の価格:

イラン市場におけるピスタチオの価格は、各年の収穫量によって変動します。収穫量が多ければ価格は安定しますが、収穫量が少なければ価格は上昇します。通常、収穫期(9月)は市場に商品がなく、需要が高いために高値となります。収穫期が開始して2週間後から徐々に価格は下がり、安定してきます。ピスタチオの市場価格に影響を及ぼす一つの要因は、輸出の条件です。イランのピスタチオは味、形状、大きさが多様なことから、ヨーロッパをはじめ国際市場では高級品として扱われます。そのため、イラン産ピスタチオの価格が他国のピスタチオよりも高値に押し上げられることがあります。更に近年は、中国の出現も価格に影響しています。世界の市場とも言われる中国の台頭により、イラン市場におけるピスタチオの価格高騰は明白な事実です。

 

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